大学入学当初から、在学中に1年間交換留学を行い、私が興味のある開発学を専門的に学びたいと思っていました。その為、日本の大学の協定校であり、かつ開発学や国際関係学に定評のあるオーストラリア国立大学(以下ANU)に決めました。また、オーストラリアは多民族国家で多様性に富み、日本とは異なった文化、考え方を吸収できるのも魅力的に感じました。
交換留学準備を本格的に始めたのは、留学半年前からです。在籍大学と留学先の大学への書類提出、海外留学生健康保険(OSHC)への加入、航空券手配、留学先大学の情報収集等をしました。一番大変だった事は、両大学への書類提出です。書類は、留学志望理由、留学先大学で行いたい事、授業計画を日英の両方で書く必要がありました。私の場合、渡航時期が7月だったこともあり、書類申請を日本大学の授業や期末テストと並行しながら行いました。
オーストラリアの大学では、主に2学期制が導入されています。ANUは、1学期間に最大で4講座受講可能です。1講座は、講義2時間+チュートリアル(ディスカッションクラス)1時間で構成されています。私は開発学コースの中から前期は4講座選び受講しました。一日に講義とチュートリアル、もしくは講義だけの日もあり時間に余裕があると思っていましたが、実際は課題がかなり多く大変でした。授業とチュートリアルの事前準備として毎週100ページ近くのリーディング、課題として毎週のようにエッセイがありました。最初は慣れず、毎日毎日勉強ばかりしていました。しかし、学期途中から文章の大切な部分を抜き出して読むスキミングを取り入れる、直接教授に質問可能なオフィスアワーを活用するなど勉強方法を見直し工夫することで、勉強以外の時間も作ることが出来ました。オフィスアワーは、授業やリーディングで分からない部分について納得のいくまで教授に質問することが出来ます。その為、一人で悩むよりも効率的に勉強出来ます。また、勇気を出してクラスメイトに頼み勉強を教えてもらうなど積極的に周りの人を頼りました。
留学中、スピーキングとライティングには長い間苦戦しました。海外の大学で専門分野を英語で学び、理解して、自分の言葉で発信することは非常に難易度が高かったです。スピーキングに関しては、チュートリアルでの会話内容を録音して家で何度も聞いて繰り返し発音練習したり、事前に話すトピックで使うであろう単語を調べておいて少しでも会話に参加出来るようにしました。またライティングに関しては、私は文章構成を考えるのが苦手で、主張が弱い傾向がある為、学期の最初はエッセイでなかなか良い点を取ることが出来ませんでした。その為、友人のエッセイを見せて貰ったり、大まかなアウトラインを書いて友人、先生、サポートデスクの方に添削して頂きました。また、エッセイの書き方の本を読んで基礎知識を見直しました。スピーキング、ライティングに共通することですが、英語が書けない話せないのは圧倒的に知識不足である場合が多いと思います。その為、知識の吸収を時間をかけて行い、自分の言葉に落とし込む作業に重点を置きました。
留学生活では、様々なバックグラウンドを持つ友人との寮生活、大学が主催する勉強会への参加、オーストラリア国内旅行など様々なことを体験しました。私はキャンパスにある寮に住んでおり、パーティーやイベントが毎週のようにあったので、友達と一緒に参加して楽しみました。日本にはない海外のパーティー文化というものを肌で感じることが出来たのも良かったです。さらに、アフリカの学生・教授陣が集まる“アフリカンディスカッション”というイベントに毎月参加したのは非常に良い思い出です。アフリカの諸問題に関して、実際にアフリカ人の生の意見を聞ける機会、生徒や教授達、時にはアフリカ大使館職員の方が一堂に会して討論する機会などそうあるものではありません。多少気後れはしましたが、私の発言に賛同してくれる方がいた時、アフリカ人の方との繋がりを作れたことは私の貴重な財産です。そして、大学の長期休みを利用して行った、オーストラリア内/外旅行は忘れることが出来ません。シドニー、ブリスベン、メルボルン、ケアンズ、ニュージーランドへ行きましたが、どの場所も雄大な自然を見ることが出来ました。さらに、その土地固有の動物を見たり、現地の人と話して実生活を知ることでオーストラリアに対する理解を深めました。
留学してすぐにホームシックにかかった時が一番大変でした。もともと、短期留学経験は何度かあったのですが、1年間という長期期間は初めてだった事、勉強が大変だった事が引き金となり1ヶ月程ホームシックにかかりました。交換留学生だから途中放棄して帰りたいけど帰れない、気持ちの切り替えをする間もなく押し寄せてくる課題に圧倒されてしまいました。しかし、日本に居る家族や友人と電話をする、寮の友人に相談する、友人に美味しいものを食べに連れて行って貰う等かなり多くの人の助けを借りて、最終的には持ち直しました。今回の経験から、困ったときは周りの人に相談して助けてもらう、辛くても歩みは止めず何かしら行動を続ける(私の場合は日々の課題を消化することでした。)事が大切であると強く感じました。
ANUでは、大学が主催するイベント、クラブも数多くあり自分が興味のあるものに参加することが出来ます。交換留学生であっても、内部生と同じようにクラブへ所属することが出来るので私はテニスクラブへ所属し汗を流しました。また、私は寮生活をしていたので、寮で開かれるダンスパーティーやフォーマルディナーにも参加して、現地学生と交流を深めていました。さらに、ANUは首都キャンベラに位置しています。キャンベラには国会議事堂や博物館、美術館、オーストラリア戦争記念館といった学術的な建物が多いだけでなく、バーリー・グリフィン湖や公園、自然も多いです。週末に美術館へ行ったり、勉強の合間に友人とバーリー・グリフィン湖へ出掛けたりして適度に息抜きも行っていました。
ANUは留学生に対してのサポートはかなり手厚いと思います。履修登録の時点から、事務の方へメールすることがあったのですがとにかく返信が早く対応が丁寧である印象を受けました。また、エッセイの添削指導、英会話クラスも準備されています。授業も現地学生と同じものが受講できますし、教授へ質問しに行った時も英語が上手くなくても根気よく教えて頂きました。学校全体が留学生の受け入れに積極的で、現地の生徒も留学生に対して理解があると感じました。
行動力、度胸、個性あふれる友人です。もちろん、専門的な知識と英語力もついたと思います。オーストラリアでは自分から行動しないと何も得ることは出来ないと思います。機会は山のようにありますが、それを上手くものにできるのは自分次第だと思います。そのため、まず行動してみる癖がつきました。とはいえ、海外で新しいことをしよう、新しいコミュニティに入ろうと思うと緊張します。イベントへの参加、クラブ見学といった些細なことでさえ私にはかなり勇気のいることでした。さらに、英語力が拙いために、馴染めないこともありました。しかし、何度も挑戦して成功体験を重ねることで、新しい環境に飛び込んでいける度胸がついたように感じます。こうして、多くのコミュニティに参加していくことで友人を作ることが出来ました。国籍も、専攻も、性別も多種多様ですが、私に刺激を与えてくれる素晴らしい友人です。オーストラリアのような、多民族国家に来たからこそ得ることが出来た縁なので大切にしていきたいと思います。そして、英語力に関してですが、自分の意見をはっきり伝えられるようになった、リーディングスピードが上がったのは留学の成果かと思います。
後悔のない選択を行ってください。私は短期語学留学、長期交換留学とどちらもの経験がありますが、留学をしなければ良かったと思ったことはありません。もちろん失敗した事や辛かった事も数多くありますが、そこから学ぶことは学校の授業と同じくらい大切だと思います。自分が立てた留学プランが成功すればそれでいいですし、もし思い描いたように行かなくてもきっと日本にいては学べなかった事や、出会えなかった人々がいるはずです。皆さんも、オーストラリアでしか出来ない体験をしてみませんか?